[Japanese/English/Espanol]
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技術解説(Technical Comments) |
ここでは、アニメーションを使って各アンテナやマイクロ波回路の動作原理の概要を説明します。詳しくは論文をご参照ください。
各種給電回路 (Feed Circuit) |
同軸モード給電 |
ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)の給電に使われます。ハの字のスロットペアを同心円状に並べると、同軸モード給電方式では円錐(conical)ビームが出るので、ボアサイト方向にペンシルビームを放射するためには正面で位相が揃って電磁界が強め合うようにハの字スロットペアを螺旋状に配置する必要があります。
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回転モード給電 (Rotational Mode Feed) |
上の同軸モード給電でラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)を給電し、正面にペンシルビームを形成するにはハの字スロットペアを螺旋状に配置しなければなりません。しかしRLSAの素子数(スロットの周)が少ないときには、解析モデルでは周期境界壁を用いるので、スロットを螺旋状に配置すると外部および内部の構造が解析モデルと大きくずれてしまうことが懸念されます。そのときは、ハの字スロットペアは同心円状に並べておき、励振波として回転モード(周方向で振幅は一様ですが、位相は線形に360°傾いています)を用います。回転モード励振用のマイクロ波回路としては、空洞共振器、マイクロストリップ線路を用いたリングスロット、方形導波管短絡面上リングスロット、短絡方形導波管広壁面上クロススロットなどがあります。現在は短絡方形導波管広壁面上クロススロットが簡単な構造、製作の容易さ(誘電体基板不要)などから有力な候補と考えています。
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導波管スロットアレー (Slotted Waveguide
Array) |
平行平板ポスト壁導波路 (Parallel Plate
Post-Wall Waveguide) |
平行平板ポスト壁導波路
(Parallel Plate Post-Wall Waveguide) |
平行平板ポスト壁導波路は電子回路のプリント基板(PCB, Print Circuit Board)の上下の導体(銅箔)をポスト壁と呼ばれる金属メッキされた穴で電気的につなげ、ポスト壁を多数並べて方形導波管の狭壁を模擬します。ポスト壁の加工はスルーホール(through hole)またはビアホール(via hole)と呼ばれる電子回路のプリント基板加工技術を用います。開放構造のマイクロストリップ線路に比べて電磁界の周囲への広がりがなく、閉構造のため外部の電磁界を拾うことも無いのでEMC(EMI, EMS)の観点からも優れています。また、マイクロストリップ線路に比べて基板を厚くすることができるため、上下の導体に流れる電流密度が小さくなり、導体損を低減できるという特徴があり、特にミリ波では魅力的です。 現在、ポスト壁導波路-方形導波管の広帯域変換には成功しています。実用化のためには種々の導波路間で自由自在に変換し、接続できるようにする必要があるため、ポスト壁導波路-同軸線路、ポスト壁導波路-マイクロストリップ線路等さまざまな変換器の研究も行っています。 平行平板ポスト壁導波路のアンテナ応用例が平行平板ポスト壁導波路スロットアレーであり、他にもバトラーマトリックス、導波管フィルタなどの様々なマイクロ波回路に応用されています。
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マイクロ波回路 (Microwave Circuit) |
バトラーマトリックス
(Butler Matrix) |
バトラーマトリックスは複数ある入力ポートのどのポートから電力を入力しても、出力ポートには均等に電力が分配されますが、それら出力ポートの位相の傾きは入力ポートによって違います。そして、どのポートから入れても出力ポートに現れる位相差は線形に傾く(傾きは異なる)ようになっています。これをアンテナに応用すると入力ポートを切り替えてビームを切り替えることができます(電子ビームスキャン)。上のものはポスト壁導波路に構成したアンテナ一体型バトラーマトリックスであり、マイクロストリップ線路などで構成した場合に比べて挿入損失が小さいのが特徴です。 バトラーマトリックスの基本原理はデルタ関数の離散フーリエ変換と推移律(F[f(t-t1)]=F[f(t)] exp(jωt1))です。デルタ関数(ディラックのデルタ: δ)を離散フーリエ変換すると、(デルタ関数δ(t)のフーリエ変換は1なので)どの周波数のフーリエ係数も振幅は一様です。そして、デルタ関数を時間軸上で平行移動すると(δ(t-t1))そのフーリエ係数はどの周波数でも振幅は同じだけど、位相に傾きがつきます(F[δ(t-t1)]=exp(jωt1))。つまり、上の図で、左の入力ポートが時間軸に相当し、右の出力ポートが周波数軸に相当します。こうして、入力としてデルタ関数を与えてフーリエ変換することで出力ポートの位相の傾きを制御することができます。そして、バトラーマトリックスでは離散フーリエ変換する方法として、FFT(Fast Fourier Transform, 高速フーリエ変換)のバタフライ演算と全く同じアルゴリズムをマイクロ波回路(ハイブリッド, 移相器, 交差結合器)を用いて実現しています。そのシステマティックな設計に関しては、参考論文(T.N. Kaifas and J.N. Sahalos, "On the Design of a SIngle-Layer Wideband Butler Matrix for Switched-Beam UMTS System Applications," IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol.48, No.6, Dec. 2006.)の説明が明快です。
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Comments by T. Hirano (2004.8.14)
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